北海道美唄市(びばいし)にある炭鉱メモリアル森林公園は、かつて日本有数の出炭量を誇った三菱美唄炭鉱の跡地を整備した公園です。緑豊かな森の中に突如として現れる2基の真っ赤な立坑櫓は、見る人を圧倒する迫力があります。
北海道の発展を支えた炭鉱の歴史を感じられるだけでなく、産業遺産と自然が調和した美しい景観を楽しめるのが魅力です。今回は、炭鉱メモリアル森林公園の見どころやアクセス、周辺の観光スポットまで詳しくご紹介します。歴史好きの方はもちろん、カメラ好きの方にもおすすめのスポットです。
炭鉱メモリアル森林公園とは?基本情報と見どころ

炭鉱メモリアル森林公園は、1963年(昭和38年)に閉山した三菱美唄炭鉱の跡地を利用して作られた公園です。広大な敷地内には、当時の面影を色濃く残す貴重な遺構が点在しています。
三菱美唄炭鉱の歴史を感じる場所
三菱美唄炭鉱は、1914年(大正3年)に開坑し、最盛期には年間100万トン以上の石炭を産出した巨大な炭鉱でした。当時は街全体が炭鉱を中心に賑わい、多くの労働者とその家族がこの地で生活を営んでいました。
閉山後は急速に過疎化が進みましたが、この場所を歴史の証人として後世に残すため、公園として整備されました。現在は「日本遺産」の構成文化財の一つにも選定されており、空知(そらち)地方を代表する炭鉱遺産として知られています。
公園内を歩くと、かつての喧騒が嘘のような静けさに包まれています。しかし、残された建造物からは、当時のエネルギー産業がいかに力強いものであったかを肌で感じることができるでしょう。
シンボルである2基の巨大な立坑櫓
公園の最大の目玉は、青空に向かってそびえ立つ2基の「立坑櫓(たてこうやぐら)」です。これは、地下深くの炭層へと向かうエレベーターを動かすための巨大な巻揚機を支えていた鉄塔です。
一つは1923年(大正12年)に建設された「開運(かいうん)立坑櫓」、もう一つは1943年(昭和18年)に完成した「常盤(ときわ)立坑櫓」です。鮮やかな朱色に塗装されたその姿は、周囲の緑とのコントラストが美しく、見る者を惹きつけます。
これほどまでに立派な立坑櫓が同じ場所に2基も残っている例は全国的にも珍しく、当時の三菱美唄炭鉱がいかに大規模であったかを物語っています。近づいて見上げると、その巨大さと緻密な鉄骨の組み方に驚かされるはずです。
季節ごとに表情を変える美しい自然
炭鉱メモリアル森林公園は、その名の通り豊かな自然に囲まれた場所にあります。春には木々が芽吹き、夏には深い緑が広がり、秋には紅葉が遺構を彩るなど、季節ごとに異なる風景を楽しむことができます。
特に秋の紅葉シーズンは人気が高く、真っ赤な立坑櫓と鮮やかに色づいた木々が織りなす景色は絶景です。冬期間は積雪のため閉鎖されますが、春から秋にかけては散策路を歩きながらゆったりとした時間を過ごせます。
人工物である鉄鋼の遺構が、年月を経て周囲の森と一体化していく様子は、どこかノスタルジックで神秘的な雰囲気を感じさせます。都会の喧騒を離れ、静かに歴史と自然に向き合いたい方にはぴったりの場所といえるでしょう。
圧巻のスケールを誇る「開運」と「常盤」の立坑櫓

炭鉱メモリアル森林公園を象徴する2基の立坑櫓には、それぞれ異なる歴史と特徴があります。ここでは、それぞれの櫓が持つ意味や、当時の役割についてさらに詳しく解説します。
赤い鉄塔が青空に映える絶景ポイント
公園に足を踏み入れると、まず視界に飛び込んでくるのが高さ約20メートル以上ある2基の櫓です。鮮やかな赤色は、錆(さび)を防ぐための塗装ですが、現在ではこの公園のトレードマークとなっています。
特に晴れた日には、吸い込まれるような青空と赤い櫓、そして足元に広がる緑の芝生が、まるで絵画のようなコントラストを描き出します。フォトジェニックな写真が撮れるスポットとして、近年ではSNSなどでも注目を集めています。
かつてはここから毎日、何千人もの炭鉱マンが地下数百メートルの暗闇へと降りていきました。そうした背景を知った上で眺めると、ただの美しい景色以上の、深い歴史の重みが伝わってくるのではないでしょうか。
立坑櫓(たてこうやぐら)の役割と仕組み
「立坑」とは、地下深くまで垂直に掘られた巨大な穴のことです。立坑櫓は、その穴から石炭を運び上げたり、作業員や資材を運搬するエレベーターを吊り下げるための装置でした。
内部には巨大なドラムが設置されており、そこから伸びるワイヤーロープが櫓の最上部にある滑車を経由して、地下へと繋がっていました。立坑櫓はまさに炭鉱の心臓部とも言える、非常に重要な役割を担っていたのです。
「開運立坑櫓」は三菱美唄炭鉱の主力として長く活躍し、「常盤立坑櫓」はより深い場所から石炭を運ぶために増設されました。当時の技術の粋を集めて造られたこれらの構造物は、現代の建築とは異なる力強い造形美を備えています。
保存状態の良さが物語る当時の繁栄
炭鉱メモリアル森林公園にある立坑櫓は、閉山から数十年が経過しているにもかかわらず、非常に良好な状態で保存されています。これは、地元の人々や行政が、この貴重な産業遺産を大切に守り続けてきた証です。
日本全国には多くの炭鉱跡がありますが、これだけの規模の櫓が完全な形で残っているケースは多くありません。櫓の細部をよく観察すると、力強いボルト留めの跡や、当時の鉄鋼技術の高さを見ることができ、当時の産業の熱気を感じ取れます。
こうした遺構が「生きた教科書」として残されていることは、北海道の開拓史を知る上でも非常に価値が高いと言えます。美唄市がかつてどれほどの活気に溢れていたかを想像しながら、ぜひ間近で見学してみてください。
遺構を巡るウォーキングの楽しみ方

公園内には立坑櫓以外にも、当時の炭鉱運営に欠かせなかった重要な遺構が残っています。散策路を歩きながら、歴史の断片を探してみるのもこの公園の楽しみ方の一つです。
旧電源所のレンガ造りの美しさ
立坑櫓の近くには、かつて炭鉱に電力を供給していた「旧電源所(配電所)」の建物が残っています。赤レンガ造りのこの建物は、窓枠がアーチ状になっており、大正から昭和初期にかけてのモダンな雰囲気を今に伝えています。
屋根は崩落している箇所もあり、内部へ立ち入ることはできませんが、外観だけでも十分に見応えがあります。レンガの壁には年月を感じさせる蔦(つた)が絡まり、廃墟美を感じさせる独特の空気感を醸し出しています。
この電源所は、炭鉱だけでなく周辺の炭鉱住宅や街の明かりも支えていたと言われています。当時、最先端のインフラがこの山奥に整っていたことを考えると、炭鉱がいかに特別な場所であったかがよく分かります。
森に溶け込む炭鉱遺産を散策
公園内の散策路を進んでいくと、森の中にコンクリートの基礎や、かつて何かを支えていたであろう構造物の一部が見え隠れします。これらは「原炭ポケット」と呼ばれる貯炭場の跡や、コンベアの台座などです。
自然の力によって少しずつ風化し、木々に飲み込まれていく遺構の姿は、とても幻想的です。まるで時間が止まったかのような感覚に陥るこの場所は、日常を忘れてリフレッシュするのにも最適な環境と言えるでしょう。
散策路は比較的平坦で歩きやすいですが、一部未舗装の場所もあるため、歩き慣れた靴で訪れるのがおすすめです。深呼吸をしながら森の空気を吸い込み、悠久の時に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
写真撮影におすすめの構図とタイミング
カメラを持って訪れるなら、特におすすめしたいのが「ローアングル」からの撮影です。地面に近い位置から巨大な立坑櫓を見上げるように撮ることで、その高さと力強さをより強調することができます。
また、2基の櫓を一つの画面に収めるのはもちろん、あえて1基の櫓にフォーカスし、壊れたレンガ造りの建物を前ボケさせて配置すると、奥行きのある情緒豊かな写真になります。
光の当たり方が変化する午前中や夕暮れ時は、影が長く伸びて建物の立体感が際立ちます。特に夕日の光を受けた赤い櫓は、よりいっそう鮮やかに輝き、神秘的な一枚を撮影することができるはずです。
撮影時のポイント
・広角レンズがあると、巨大な櫓の全体像を収めやすくなります。
・雲の流れがある日は、長時間露光で空の動きを出すとダイナミックな印象になります。
・三脚を使用する場合は、周囲の散策者の迷惑にならないよう配慮しましょう。
美唄エリアの炭鉱遺産と併せて楽しむ観光スポット

炭鉱メモリアル森林公園を訪れた際には、ぜひ周辺にある他の観光スポットにも足を運んでみてください。美唄市には、歴史やアート、グルメを楽しめる魅力的な場所が揃っています。
アルテピアッツァ美唄でのアート体験
公園から車で数分の場所にある「アルテピアッツァ美唄」は、閉校した小学校の校舎や跡地を利用した、世界的な彫刻家・安田侃(やすだ かん)氏の作品が展示されている屋外彫刻公園です。
かつての炭鉱街にあった学校が、現在は美しく静かな芸術空間へと生まれ変わっています。木造の校舎内には教室を利用したギャラリーがあり、どこか懐かしい木の温もりと、真っ白な大理石の彫刻が不思議と調和しています。
広い敷地には彫刻が点在しており、子供たちが水遊びをしたり、大人がゆっくり読書をしたりと、思い思いの時間を過ごしています。炭鉱メモリアル森林公園の「動」の歴史を感じた後に、ここでの「静」の時間を楽しむのが定番のコースです。
美唄焼き鳥やご当地グルメを堪能
美唄市を訪れたなら、絶対に外せないのがご当地グルメの「美唄焼き鳥」です。一般的な焼き鳥とは異なり、一本の串に鶏のさまざまな部位(モツやレバー、キンカンなど)と玉ねぎが刺さっているのが特徴です。
もともとは炭鉱労働者たちが、安くて栄養価の高い食事として好んで食べていたものがルーツと言われています。塩・コショウのシンプルな味付けが、鶏本来の旨味を引き立てており、一度食べるとクセになる美味しさです。
また、美唄産のお米「ゆめぴりか」や、特産のハスカップを使ったスイーツも見逃せません。市内の飲食店や道の駅で、地元の恵みをふんだんに使った料理をぜひ味わってみてください。
空知地方の炭鉱遺産を巡るドライブコース
美唄市を含む空知地方は、かつて多くの炭鉱で栄えたエリアです。周辺の三笠市や赤平市、芦別市などにも、巨大な立坑櫓や炭鉱住宅、鉄道遺構などが数多く残されています。
例えば、三笠市の「市立三笠鉄道記念館」では、炭鉱で活躍した蒸気機関車や貴重な資料を間近で見ることができます。また、赤平市の「旧住友赤平炭鉱立坑櫓」は、内部の見学ができるツアーも開催されており、より深く歴史を知ることが可能です。
これらのスポットを車で巡る「炭鉱遺産ドライブ」は、北海道の成り立ちを深く知ることができる充実したプランになります。広大な十勝平野や富良野の風景とは一味違う、力強い北海道の姿に出会えるでしょう。
アクセス方法と訪れる際の注意点

炭鉱メモリアル森林公園へ向かうための交通手段や、訪れる前に知っておきたい注意点についてまとめました。スムーズな観光を楽しむために、事前にチェックしておきましょう。
札幌・旭川からのアクセスガイド
公園は美唄市の山間部に位置しているため、車でのアクセスが最も便利です。札幌市中心部からは高速道路(道央自動車道)を利用して約1時間、旭川市からも約1時間10分ほどで到着します。
美唄インターチェンジを降りてからは、看板に従って山側へ向かいます。道中の景色はのどかな田園風景から徐々に深い森へと変わっていき、ドライブコースとしても心地よい道のりです。
公共交通機関を利用する場合は、JR函館本線の「美唄駅」が最寄りとなります。駅からはタクシーを利用するか、路線バスで「アルテピアッツァ美唄」方面へ向かい、そこから徒歩またはタクシーを利用する形になります。
アクセスまとめ
・車:道央自動車道「美唄IC」より約10分
・電車:JR「美唄駅」よりタクシーで約15分
・駐車場:無料駐車場あり(数台分)
見学可能な時期とベストシーズン
注意しなければならないのは、炭鉱メモリアル森林公園には「冬期間の閉鎖」があるという点です。例年、積雪が始まる11月下旬頃から、雪解けが進む4月下旬頃までは公園へ立ち入ることができません。
見学に最適なベストシーズンは、新緑が美しい5月〜6月、または紅葉が見事な10月頃です。夏場も緑が深く綺麗ですが、山間部のため気温が高くなる日もあり、また虫も多いため対策が必要です。
訪れる際は、美唄市の観光ホームページなどで、開園状況を事前に確認しておくことをおすすめします。特に遠方から訪れる場合は、せっかく行っても閉鎖されていたということがないよう注意しましょう。
散策に適した服装と持ち物
公園内は舗装されている部分もありますが、遺構の近くまで行く際は芝生や砂利道を歩くことになります。そのため、サンダルやヒールのある靴は避け、スニーカーなどの歩きやすい靴を選びましょう。
また、周囲は山に囲まれているため、夏場でも長袖・長ズボンを着用すると虫刺され防止になります。特にアブや蚊などの虫がいることがあるので、虫除けスプレーを持参しておくと安心です。
公園内には自動販売機や売店がないため、飲み物は事前に用意しておきましょう。近くの「アルテピアッツァ美唄」まで戻ればカフェや休憩スペースがありますが、散策中の水分補給は欠かせません。
| 項目 | アドバイス |
|---|---|
| 服装 | 動きやすく、肌の露出が少ない服装 |
| 靴 | 履き慣れたスニーカーやトレッキングシューズ |
| 持ち物 | 飲み物、虫除けスプレー、カメラ、帽子 |
| トイレ | 公園内に簡易的なものはありますが、事前に済ませるのが無難 |
炭鉱メモリアル森林公園で歴史と自然を体感しよう
炭鉱メモリアル森林公園は、かつて日本のエネルギー産業を支えた三菱美唄炭鉱の誇りを今に伝える、大変貴重な場所です。青空にそびえる真っ赤な立坑櫓は、単なる産業遺構という枠を超えて、訪れる人の心に強く訴えかける美しさを持っています。
自然の中に静かに佇むレンガ造りの建物や巨大な鉄塔を眺めていると、当時の人々の暮らしや情熱が、風に乗って聞こえてくるような不思議な感覚を味わえます。北海道の歴史に深く触れたい方はもちろん、静かな場所でゆっくりと景色を楽しみたい方にもおすすめのスポットです。
美唄市の豊かな自然や美味しいグルメ、そしてアルテピアッツァ美唄のような芸術スポットと併せて訪れることで、より充実した旅の思い出ができるでしょう。ぜひ次の休日は、歴史と緑が調和する炭鉱メモリアル森林公園へ足を運んでみてください。




